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トップ > 労働法務コラム一覧 > <過労自殺>労災認定「時間外労使協定に問題」

労働法務コラム

<過労自殺>労災認定「時間外労使協定に問題」

今回のコラムは、長時間労働による労働者の自殺について、労災認定が下されたニュースです。長時間労働による過労死の労災認定はここ数年、増加傾向にありますが、今回は労働基準法の問題点が浮き彫りになった事件でもありました。以下、概要になります。

(毎日新聞記事より一部抜粋)
石油プラント建設メンテナンス会社の千葉事業所で現場監督に従事していた男性(24)が08年11月、著しい長時間労働で自殺し、10年9月に労災認定を受けていたことが分かった。同社は時間外勤務について「月200時間まで延長できる」とする労使協定届を千葉労働基準監督署に提出し、受理されていた。建設業は国が定める45時間の上限規制の適用除外とされているためで、遺族を支援する弁護士らは、国に改善を求める要請書を提出した


弁護士らによると、男性は07年入社。08年7月の残業時間は218時間超に上り、翌8月末に精神科を受診、強迫性障害との診断を受けた。一時的に仕事の少ない部署に異動したが、再び多忙な部署への異動が決まった直後に自殺した。

●日本の労働時間法制について

この事件において、まず着目すべき点は、日本の労働時間法制についてです。労働基準法では、原則として1日8時間、1週40時間という労働時間の限度が設けられています。ただし、この労働時間の枠で収まらない場合、労働基準法36条に基づく労使協定(通称「36協定」)を労働基準監督署に提出、受理されることにより、時間外労働が認められるという法律で運用されています。いわば、36協定に定めることによって労働させても労働基準法に違反しないという、免罰効果を持っています。
ただし、「延長できる労働時間の限度」が指針で設けられており、例えば1箇月の単位では「45時間」とされています。

(時間外労働時間の限度時間の基準)

一定期間 限度時間
1週間 15時間
2週間 27時間
4週間 43時間
1箇 45時間
2箇月 81時間
3箇月 120時間
1年 360時間

●特別条項付き労使協定(36協定)について

さらにまた、業務の都合により上の表で定める限度時間を超えて労働させる可能性がある場合、「特別条項付き協定」を締結することで、前述の限度時間を超えて労働させることができます。例えば「受注が集中し納期に遅れる場合など臨時の事情がある場合は、部署ごとに人事の承認を受け、1箇月について更に○○時間(年6回まで)延長する」といった、免罰効果に更に免罰効果を加えたような協定を締結することにより、延長させることができます。

以上のように、行政庁への届出により免罰効果としての時間外労働は認められているものの、一定の限度時間が設けられています。

●時間外労働の限度時間が適用されない事業等

一方、厚生労働省では、建設業務や自動車運転などは納期が厳しいなど個々の理由で除外対象にしています。その場合の上限は明確な規定はありません。

(時間外労働の限度時間が適用されない事業)
@建設等の事業
A自動車の運転の業務
B新技術、新商品開発等の事業など

今回の事件が起きた事業所では、前述したように、時間外勤務を求める際に必要な36協定で、延長できる労働時間を1カ月150時間とし、さらに納期が切迫した場合は200時間まで延長できるとしていました。また、労働基準監督署はこの届出を受理しており、この部分に関しての違法性は認められません。

●過労自殺と労災認定について

過労自殺は、厚生労働省が過労死について「業務と発症との関連性が強い」とする月80時間超の残業があった場合、労災認定される傾向にあります。今回の事件を担当する弁護士は「自殺すれば労災が認められるような36協定を受理するとは、何のための労働行政なのか。厚生労働省が本気で自殺対策に取り組むつもりなら、すぐに改めるべきだ」と指摘しました。

同社経営企画部は「時間外勤務は最大でも169時間で36協定の範囲内だった。納期が集中する時期などに残業が多いという認識はあり、改善していきたい」とコメントしています。

●長時間労働のリスクについて

今回の事件は、労働時間の限度が設けられていない業種において起きた事件で、労働基準法違反が認められたものではありません。法律の範囲内で、また行政庁が届出を受理していながらも起きてしまった事件です。ただし、法律違反が認められない場合であっても、事業所は※「安全配慮義務違反」を問われます。

(※安全配慮義務)
民法、労働基準法、労働安全衛生法などに基づき、使用者が労働者に対して負う義務(雇用契約に付随する義務)の一つで、「使用者は労働者の生命および健康などを危険から保護するよう配慮しなければならない」というものです。

使用者が安全配慮義務を怠ることによって労働者が損害を被ったときは、民事上の損害賠償責任が問われるなどの損失・負担が発生します。使用者は、労働者の健康や安全に配慮しなければならないという安全配慮義務を負っています。

長時間労働が慣例になっている業種であれ、安全配慮義務違反が認められると事業所が責任を追及され、賠償を求められるという事態にもなりかねません。「法違反はしていないから」というだけでは、会社としての責任を果たしたことにはなりません。
労働時間の限度が設けられていない業種であっても、長時間労働により引き起こす過労死、メンタルヘルス不全などの面については、労働者を雇用する以上会社として配慮をしなければならないという義務があることを徹底した上で、労務管理を行うことが大切です。
少し顔色の悪い社員がいる、遅刻や欠勤が多くなってきたなど、会社として気付いたことがあればすぐに面談指導を行うなどの行動を起こすことが必要な時代となっています。


チーフ労務コンサルタント
中山 伸雄

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